王小迪琴弓 張鋭特製
王小迪(wang-xiao-di)が張鋭(zhang-rui)のために特注した胡弓用弓です。張鋭についてはこのリンク先の下の方も見て下さい。
まず基本仕様についてご説明いたします。長さは約83~86cmあります。基本的に二胡から二泉胡、中胡弓まで使える規格です。しかし張鋭は二胡に使うために発注しています。ただ3cm違うだけなので特に他に変わるところがないので、自然に任せる形で素材を使っていく考えのようです。最大の特徴は馬尾です。1/3花毛(黒毛ではなく茶色)、2/3栗毛(白毛)です。弓魚も丸(月)と判のものが混じって入荷しています。
次にこの弓の由来について触れたいと思います。私は絹弦における粗弦の演奏で黒毛の弓を使っており、これが1つ壊れたので、王女史に注文いたしました。王女史は新製品を作って見せるので待つようにと言いました。そこでしばらくして指定の日に行きますと出来上がっていた弓がこれでした。張鋭も私と同じようなことを言い、白毛だと甘すぎて良くないというので、王女史が幾つも弓を作り最終的に完成したものがこれなので、あなたの気に入るだろう、ということでした。張鋭はスチール弦なので私の使用法と合うだろうかと心配になりましたが、全く問題はなかったので、低音楽器の発音に以前から疑問をお持ちだった方はこれで納得すると思います。たぶんこれを使うようだと白毛の弓は要らなくなると思います。
これはそのまま二胡にも使えます。穏やかな流れの曲の場合に使うことを想定しているようですがどんな曲でも問題なく拉けます。ただ、新しい蛇皮の二胡には、かなり高い確立で相性が悪いです。雑音だらけになります。ところが、これまで白毛の弓で拉いてきていたものがだんだん二胡が古くなるに従って駄目になっていくという場合は、この弓に換えると非常に美しい音を出すようになります。この弓は完全に"黒"毛ではないものの、その特徴は一般の弓と比較して、白黒ぐらいに対称的です。これまで白毛の弓で何の不満も感じなかった方は、この弓に手を出さない方が無難です。この弓のカリッと香ばしい音は新しい二胡では全く出ない場合が多いです。参考にしていただいて、何か思い当たった方は一度使ってみてください。
以下の録音は、すべて絹弦を使っております。特注弓の発音は明瞭で白毛はバイオリン用弓毛を使っていますが、音が滑らかな印象があります。白毛は音が鈍くなる傾向があるので特注弓ではより明確な音が出るように作ってあります。特注弓で二胡を演奏するのも可能です。板胡用の曲、戯劇用の曲などには特に合います。
張鋭特注弓にて中胡 白毛二胡弓にて中胡 張鋭特注弓にて二胡
文革期以後の二胡の欄の中胡でも録音しています。
張鋭は白毛二胡弓について、音色は美しく繊細で多くの外国曲もこれで拉くに何ら問題はない、しかし哀愁に満ちた兰花花, 二泉映月などのレパートリーでは音色が不足し表現しきれないと言ったということです。そこで王女史は数度に亘り張老人の家を訪問し、ついに満足に至る物ができたといういきさつのようです。老人は 「不是我在拉琴,是琴在拉我」とおっしゃられたとか。色んな見方が出来ますが、道具が合わないとこういう心境にもなりません。それにしても90歳を超えられても情熱的に取り組んでおられるというのが驚きますね。写真で記録に残っているのはいいものですね。この弓が評価されれば歴史に残ると思います。(追記:老人の箴言ですが翻訳すると「私が二胡を拉くのではない。二胡が私を奏でるのだ」)
王小迪琴弓 蒋风之特製
配件は蛇木のみ、象嵌は丸、写真のタイプのみです。全体的なデザインとか素材の相性の関係で現状では交換は好ましくないという結論になっていますので、他のものは今後も入荷しない見込みです。この一種のみです。
蒋风之(jiang-feng-zhi)がまだ存命中に王小迪に特注した特殊な二胡弓です。蒋は王を見いだした人物で、その後この2名は二胡弓を改革していきますが、その過程で蒋は自分の芸風に合った弓にも拘っていたようです。 蒋は録音も残っていますが、かなり特殊な演奏をされる方で、それには弓の形状も影響を及ぼしていたのかもしれません。
弦堂が王小迪の家で確認した時点では(注:これは"確認"でありまして、他人の家の室内を物色した訳ではありません。しかし室内は興味のそそられる環境であるのは否定できません。)確認時点では、蒋风之特注弓は1把のみ残っており、特徴としてはまず、竹が細い、馬尾が少ない、よって蒋の演奏は王女史の証言によると音量が極めて小さい、といったようなことですが、最大の相違は、手持ち部分の湾曲です。普通は縦に微妙なS字に曲げてありますが、これを横に曲げています。(左の写真を参照下さい。) このような湾曲であれば、弓の持ち方から微妙に変わってきます。鉛筆を掴むような感覚になり、初心者でも扱いやすいですが、老師のいらっしゃる方は「持ち方がおかしい」と老師に怒られるようだと使用を停止しなければならないリスク?がありますし、小店に対しても「変なものを売っている」との批判も大いにあり得るので、その場合はあらかじめ隠密な環境でのご使用をお願いいたします。
王女史の証言では、蒋风之はこの弓を使用して「漢宮秋月」を演奏し、まさに消え入るような小さな音量で演奏したということです。馬尾の量は150根で、一般の二胡弓の300根の半分ですが、今回作っていただいた物は200根と少し増量しているということなので、あまりに小さな音というわけではない感じ、程々に仕上がっています。
王女史は「こんな弓は駄目ですよ」と言います。確かに現代二胡演奏の常識からは外れていると思います。しかしこの弓は美意識に対する観点が違います。「上手な演奏」と「美しい演奏」・・この2つは同じようですが違うものです。そういう違いが現代二胡弓と蒋风之特注弓にもあるように思います。
入荷は常に少量とします。少数のアンチ的な方々の好奇心と需要を満たすだけの量のみ購入して参りますが、販売停止などで供給が途絶えることは避けるようにします。それで入荷までお待たせすることがあることをご了承下さい。ただ弓の先端部分のこの独特の細工(右の写真を参照下さい)は、王女史が住んでいる北京民族楽器廠宿舎の1階のおじいさんが削っており、彼は王女史が蒋风之に二胡弓を供給する前に二胡弓を作っていた人ということなので無名の伝説的人物と言えますが、この方に削っていただいていますので、亡くなりましたらこの二胡弓の製造も停止となります。蒋风之に供給していた二胡弓に以前からこの細工を施していたようです。それでこの手間をカットするのは美意識の観点から譲れないという話なので一旦製造停止が決まりましたら復刻の可能性は低いと思って良いようです。
この弓を黙って使って他人から「あれ? あなたの弓は変わっていませんか」と言われることに快感を感じる方「自分は人と違うし・・」などと発言して生活を楽しんでおられる方々については特にここで意見はありませんが、まじめに古典を考えた二胡弓ということで、地に足を付けて演奏の観点からも評価いただきたいと希望しております。現代弓よりも蒋特注弓の方が手になじむと思います。以前からある従来型に馴れている方には違和感があると思いますが、繊細な表現にこだわったら、1つの可能性としてこうなる、ということで楽しんでいただければ幸いです。
王小迪琴弓用 鼈甲製弓魚

蘇州に発注して作っております本鼈甲の弓魚です。鼈甲はそれほど厚みがありませんので、数枚を張り合わせて厚みを出した上で加工してあります。
写真にあります3つのみ入荷しております。残りは2つです。
王小迪弓以外にも使えると思いますが、合わないものもあると思います。王小迪二胡弓であれば、どれにも合います。

