ご質問(二胡の扱いについて)6

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二泉映月を演奏する時は、二泉弦を使わなければいけませんか?

二泉映月を演奏するアービン
決してそんなことはないと思います。
プロのレコーデングでも、D-A'で演奏している場合があります。
しかし、楽譜にはG-D'で指定があります。

孫文明の作曲作品にも同様の指定が有る場合があり、F-C'が割合多いです。
D-A'もありますが、千斤を外すよう、指定があったり、D-D'などもあります。
D-D'はやっかいで、通常弦が入手できないと思います。
恐らく、絹弦しかないと思います。
G-G'に替えるとか、対応すれば可能です。
そうしてでも演奏したいと思わせる魅力が孫文明にはありますね。

劉天華の特に初期の作品などは、G-D'を想定しているという見解がありますが、これはどうしてなのかわかりません。
古い二胡は、すべてG-D'であったという考えに基づいているのかもしれません。
しかし、劉天華の時代は、G-D'とD-A'が地方によって混在しており、必ずしも統一されていはいませんでした。
少なくとも、現在の劉天華作品はすべてD-A'でチューニングされるようになっています。
劉天華の師・周少梅の出身地はD-A'だったので、劉は最初からD-A'で作曲したと考える方が自然です。

阿炳の出身地・無錫は、この地の道士が二胡をG-D'にて伝統的に演奏してきたので、道士出身の阿炳もすべての作品をG-D'で作曲しています。
彼の二泉映月の演奏を録音した天津音楽学校(劉天華による設立。後に北京に移転し、現在は中央音楽学院)の教授たちは、阿炳がG-D'で美しく演奏するので、驚いたと言われています。
それまでは、G-D'のような粗弦で演奏すると音が雑音だらけで演奏できないと考えていました。
二胡大師・储师竹 持ち帰られた録音を天津で聴いた储师竹も、演奏を聴いて驚き、採譜して楽譜を出版するときに、論文の中でこの経緯について説明しています。
(右の写真は、劉天華の6人の高弟の1人とされた储师竹)
それでも、G-D'はあまり演奏されなくなり、天津-北京流のD-A'で統一されていきました。

こうした地方の文化の違いによって様々な作品が生まれたり、チューニングを大幅に変えることにより、新しい作品を生み出すというようなことがなされてきました。
それゆえ現在の、規格が統一された二胡では合わない楽曲もありますが、それだけの理由でこれら貴重な遺産を無視するのは余りにもったいないことです。
ぜひ、今お手持ちのもので可能なら、できる限り融通を利かせて、様々なタイプの作品に接していただけたらと願っています。