二胡絹弦の販売 - 弦堂
最初は歴史の話から始めたいと思います。
二胡は清代乾隆年間後期以降、中国全土で禁止されていたので、現代に残されている二胡の大部分のものは清末以降のものになります。
乾隆帝は晩年、帝位を太子に譲った後も支配し続けたので皇帝が親子で並立しているような体制になり、この頃絹弦を使っていた二胡は、内弦を老弦、外弦を子弦と呼んでいたので切れた時に縁起が悪い、皇帝のどちらかに不吉な徴となるという理由で禁止されました。
その法律は清代末期(~1912年)の社会が混乱した頃に無視されるようになり、その混沌とした中で庶民の間に再び広まりだしたとされています。
この頃は、日本では明治時代になりますから、残された二胡はそんなに古いものではありません。
現代二胡の形が定まってきたのは、文革期(1966~76年)なのですが、そのように洗練されてきた土台となったのは、建国期(1949~年)から大躍進政策(1958~年)が始まるまでの時代に各地に民族楽器の大工場が作られ、見習いから名工に至るまで当時の思想に基づいてすべてこのような単位(職場のこと)に配属となった頃と考えていいと思います。
最初に作られたのは、蘇州民族楽器厂で(1955年)、それから数年で、上海、北京、天津にも作られてゆきました。
これまでの時代は、様々なデザインの二胡があらゆる職人によって創造され、規格もまちまちでしたが、職人たちが一堂に会して作業を行う環境からだんだんと効率化が進められたりして、今の形に1本化されていったようです。
民国期(1912~49年)の楽器、二胡以外の弦楽器も含めてこれらについては、高級楽器は楽団用が主で、この高級という意味は今と同じで、すなわち材の価格であり、本黒檀、海南花梨あたりを頂点として、紫檀などが使われています。
それも経済力のある楽団か、材の産地の楽団などに限られる傾向があり、その他、財閥関係などに振る舞われていたので、北京、天津、上海あたりに集中して見つかる傾向があります。
山東から河北南部の人々は、物を大事にする文化があるので、こういうところからも良いものが出ることがあります。
二胡に使われる材で、もっとも優れたものは、黄花梨です。
(右の写真参照。古楽器の老紅木化した黄花梨材。)
これは広東、広西、越南(ベトナム)あたりで産出しますので、高級古楽器はほとんどこの材を使っています。
現在は絶滅が確認されており、古い材が入手できないと二胡を作れない状況です。
中でも最高の物は、海南島の黄花梨で、漢方薬として使った時には味が濃く、木目は大きな虎紋が出る優れた材ということで珍重されています。
今日では、黄金より高価とされています。
この材は、明代始めに北京の王宮(今の故宮)の建設で使用され、宮廷家具の材としても用いられたので、清代に至ってほとんど枯渇してしまい、清末以降ぐらいから作られ始めた二胡にとって海南花梨のものというのは極めて珍貴です。
それゆえ、大陸の黄花梨が使われ、高級二胡にはすべてこの材が用いられました。
今では少量を除いて古楽器でしか入手できません。
花梨材自体は、今でもたくさん使われています。
現在、紅木として販売されている二胡は、紅花梨などの材を使っており、これは台湾の家具業界では紅木として認められていません。
花梨材には、他に白酸木なども使われ、これは主に京二胡に使われていますが、これも本紅木ではありません。
黄花梨とは、価値が隔絶していると考えて構いません。
黄花梨は、赤色の材が非常に多く、黄色かかっているものは珍しいです。
紫檀材は、もともとインドネシア産で、王朝時代(清代以前)には貴族が用いる家具に使われる高級材でした。
海南花梨は宮廷で使われ、それより一段劣る紫檀は、貴族が使う木材だったと言われています。
東南アジアでも貴族の家具として、使われてきた経緯があり、その家具を解体して楽器に使うことがあるのですが、この古い紫檀を「老紅木」と呼んでいます。
100年以上前の本物の老紅木は、紫檀とひけをとらない高額の木材です。
比較的新しい木材も、老紅木と呼んでいます。
この新旧の差が、価格に反映されているようです。
現在の紫檀はインド産で、これは枯渇しましたので、現在はほとんどありません。
インド政府が数年前より輸出を禁じています。
その後、アフリカ・マダガスカルの紫檀を伐採していましたが、これも2008年の初め頃にはすっかりなくなって、高騰を続けています。
老紅木と同様、こなれた価格の紫檀二胡がよくありますが、木材の芯の部分を使っていないという理由があるようです。(2号材などと言います。)
最近は、インドネシアで植えていたのが育ってきたので、こういうものが使われているという話もありますが、よくわかりません。
本物の特級の紫檀二胡は、ほとんどないと考えていただいていいと思います。
中国でも非常に高価で取引されています。
黒檀は、種類がたくさんありますが、特によく使われているのは烏木という木材です。
東南アジアに多数育成しており、安価で音も良いので好まれています。
黒檀の最高材は、紫檀とひけを取りません。
沖縄三線は、紫檀より、黒檀の方が高価です。
本物のいい材であれば、黒檀も最高グレードですが、見つけるのが困難です。
ご自身で原木を入手され、工房に発注するしかないかもしれません。
日本の三味線や胡弓の場合は、現行の最高材は紅木です。
次に紫檀、そして花梨です。
中国の場合も三弦や琵琶はこういうランクで、これは木材自体が厳密には違うと思います。
中国の二胡材、安い材からランク付けしてみます。